【メディテック研究所コラム】第2回:サプライサイドにとってのネイティブアド

 昨年、Viewable impression よりも少し早いタイミングでネイティブアドについても盛り上がりを見せていました。このネイティブアドについては定義の差はあれど実際に導入されているケースが徐々に増えてますので本稿ではこの点についてサプライサイドの立場で考察していきます。


■定義がバラバラなネイティブアド

 ネイティブアドを論じるまえに、本稿においてのネイティブアドの定義をはっきりさせておきたいと思います。


 市場の勃興期にありがちですが、ネイティブアドの市場でも現在どこまでをネイティブアドとするかという統一ルールはありません。また、口コミマーケティングがそうでしたが、市場の初期では「これも口コミマーケティングとしよう」という形の異業種からの参入が相次ぐため、統一ルールが固まるのは難しいという状況でした。固まるのは、市場が落ち着く成熟期になるでしょうか。


 例えば、IAB が発表した『ネイティブアドプレイブック』にはインフィード型が以下のように定義されています。

1 つ目のインフィード型は以下の特徴を持っている:
・ 媒体社の通常のコンテンツの中にある
・ コンテンツが書かれているストーリー形式と同じ形式で書かれている/または媒体社の編集チームと協力し て周囲のストーリーに合うように書かれている

・ 通常のコンテンツのようにサイト内のページにリンクしている

・ どんな記事が周囲にあるかをクライアントが正確に把握できる固定の広告枠で販売されている

・ インタラクションやブランドリフトといったブランディング指標で計測される 


2つ目のインフィード型は以下の特徴を持っている:
・ 媒体社の通常のコンテンツの中にある
・ プロモーション広告である

・ サイト外のコンテンツ/編集記事/ブランドのランディングページへリンクしている

・ 固定枠で販売されている

・ CTR やコンバージョンによって計測される

(DAC社翻訳の『IAB ネイティブアド・プレイブック 』より)

http://www.dac.co.jp/press/pdf/20140619_iab_nativead.pdf


いかがでしょうか?実際にはインフィードだけでも三種、さらなる種類についてもこの後言及されていますが、細かな差異を挙げると全てがバラバラになってしまうほど、定義が定まっていない状態です。


そこで本稿ではネイティブアドを以下のように認識することとします。

  1. 媒体社の通常のコンテンツの中・至近にある
  2. プロモーション広告である
  3. サイト外のコンテンツ / 編集記事 / ブランドのランディングページへリンクしている
  4. 配信素材を元にしてメディアが自社に合うデザインの広告を作る事ができる。

厳密な定義ではありませんが、ここで完全を目指すとそれだけで本稿の紙幅が尽きてしまいますのでこの領域についてみていきたいと思います。


■サプライサイドにとってのネイティブアドの意味

さて、このネイティブアドですがサプライサイドから見ると以下のようなメリットがあります。

(1)既存の広告枠では無視されがちだった広告を再び見てもらうチャンスが増える

(2)既定の広告規定にとらわれることなく、自社デザインを優先した広告枠開発が

可能になる

(3)媒体社が自社の責任において広告枠のテストを柔軟に行う事が可能になる


特に、これまでネイティブアドについては1の文脈で語られる事が多かったように思います。「バナーブラインドネス」として有名ですが、「決まって広告が設置されている箇所はユーザーから無意識のうちに認識の対象から外されてしまう」という事象です。


ある調査では、ユーザーのうち実に84%もの方が広告を一度もクリックした事がないという結果が出るほど、この問題は注目に値する事象です。


もちろんこれはひとつのメリットではありますが、我々は、媒体社にとってはより2と3の意味が大きいと考えています。そして、ネイティブアドへの理解が深まるにつれこのメリットがさらに認識されるようになると予測しています。


ですので本稿では2と3を我々の実体験を元に考察していきます。


(2)既定の広告既定にとらわれることなく、自社のデザインを優先した広告枠開発が可能になる

Amebaでバナー広告を扱い始めてから10余年が経とうとしていますが、スマートフォン、そしてアプリ領域のトラフィックが増えるにつれて以下のようなフレーズが社内で聞かれるようになりました。


「サービスがこのデザインだと、どこにもバナーが入れられない」


バナー広告の利点は IAB が標準を定めていて、日本でもそれが信用できるスタンダードである事でした。この環境では、クライアントは製作コストや入稿負荷を抑えながら DSP/アドネットワーク を通じて多様なサイトに出稿する事が可能です。


メディアにとっても標準サイズに対応しておきさえすれば、純広告の受注時に広告主が配信素材をもっていない心配をする必要はほぼありません。また、アドネットワーク経由で広告を受ける場合でも、ある程度の広告主が入札に参加する=安定したCPMを望む事ができました。


ところが、本節の冒頭のような声がメディアの製作サイドからは聞こえるようになります。クリエイティブで使いやすいアプリ/スマホサイトのUIにこだわろうとすればするほど、サイズの融通が効きにくく、トーンが統一されていないバナー広告がサイトから「浮いて」しまうのです。


これは、初めから広告枠の位置を想定していない場合には顕著な障害になります。何しろ想定してないので、広告を入れるためにはデザインを再既定する必要があるからです。もちろん、それは大作業のため現実的にはデザイン全体の邪魔になりづらそうな”端っこ”に枠を追加する事が大抵でした。


その状況を打破するために、 「Ameba」 では16年3月を目処にバナー広告の撤廃とネイティブアドへの全面移行を予定しております。自社の配信サーバの立ち上げに伴って配信サーバからレスポンスされる素材を使ってメディア面でレンダリングする形式に現在も少しずつ移行していっています。これによって「サイトデザインと違和感が無い」広告の設置が可能になりました。


この効果はとても大きく、広告を後から入れる場合でも既存のデザインを尊重しながら追加する事が可能になりましたし、初めから想定する場合も従来よりも自由度ははるかに高まりました。この傾向は、媒体社がクリエイティブにこだわろうとすればするほど高まると考えています。


(3)媒体社が自社の責任において広告枠のテストを行う事がより柔軟に可能になる

さて、デザインの話を一度脇におくとして、収益の話に移ります。我々がネイティブアドへの切り替えを行った当初、CTRは従来の6倍、CPMは実に3倍を記録しました。


話がこれで終わると、ネイティブアドはとても素晴らしいフォーマットとして全て片付くのですが ーーー終わりませんでした。


簡単に言うと、広告効果が良い広告主企業が少数派だったのです。


この事実は、我々のような媒体社にとっては2つの意味があります。ひとつは継続出稿する広告主が限られてしまうという事。もうひとつは利用ユーザーにとって、興味の有る無しに関係なくクリックが発生しているので長期的にはユーザー離れを起こす事。


この問題を解決するために、代表的なところで広告枠そのもののサイズ、クリックウエイトの有無、クリッカブルな領域のサイズ、広告枠の配置の仕方、採用テキストのサイズ、画像のサイズといった点をテスト/検証し、最終的には収益性は概ね1.2倍で純広時よりも効果が上がり、高い継続率に至るまでになりました。(図2参照)

次稿以降でこの改善について触れる予定ですが、ここでのポイントはネイティブアド形式であったからこそ踏み込んだ変更も可能であったという事です。

上記表のように、ある程度媒体社が自社の責任をもって踏み込んだテストを行える点は評価されていくと考えています。


末筆にはなりますが、今回のネイティブアドへの移行は弊社では自社の配信サーバを使用して実現しています。そのため、純広告での販売の時代と比べても多くの広告主企業にご利用いただく事が可能でした。


これがアドネットワーク などを利用される場合、バナー配信と比べて広告主社数が極端に少ないケースも考えられます。この場合は アドネットワークの性能や媒体社の努力に関わらず単にオークションの原理が十分に働かない事によって CPM が想定ほど伸びない事も想定されます。


上述の通り付記させていただき、本稿を終わりとしたいと思います。