ここ最近、「見られてないインプレッションは意味が無い」というフレーズのもと「Viewable impression」 が注目されてきています。これまで 「Viewability」についてはどちらかと言うとデマンドサイド(広告主、代理店)にとってどのような意味を持つか?という文脈で語られる事が多かったように思いますので、本稿では「Viewability」をサプライサイド(パブリッシャー、メディア)の観点から述べたいと思います。
■Viewable impression とは何か?
まずご存知の無い方の為に説明しますと、 Viewable impression とは、広告インプレッションのうち、一定以上の面積、一定以上の時間ブラウザ内に表示されたものを指します。この「一定以上の面積」と「一定以上の時間」については IAB によって「50%以上、1秒以上」と標準が規定されていますが、メディアによっては「完全表示で1秒以上」といった具合に、より厳しい水準としている場合もあります。
ブラウザに表示されている事が前提ですので、例えばバナーブラインドネスのような、「枠そのものが無意識のうちに認知対象から外れている」というような事象には対応していません。あくまでも、ブラウザ内に「認知され得る状態で表示されたか?」を表す指標です。これが生まれた背景については様々なところで触れられているので本稿では取り扱いません。
■サプライサイドにとっての Viewability
まず結論から書いてしまうと、3点に集約されます。
(1) Viewable impression はメディアにとっても歓迎するべきもの
(2) Viewable impression の買付けは当然のようにデマンドサイドに広がる。また、Viewability をマーケティング活動に織り込む事がダイレクト顧客においても試行錯誤される
(3) 「Viewability は CTR に相関し、ユーザーモチベーションの解消度が CVR に相関する」という事実が後に認識され、広告枠のバイイングに反映される
それではひとつずつ見ていきましょう。
(1) Viewabile impression はメディアにとっても歓迎するべきもの
まず、ひとつめの論点ですが、それにあたって Viewability と CTR の関係性について、図示したいと思います。
図1は、我々が保有している広告枠について、横に Viewability、縦に CTR をとった散布図です。集計期間は11月の20日間で、期間合計で30万 imp 以上のフッター枠を対象にしています。その性質からほぼ自明だと思うのですが、一部の例外を除いて Viewability と CTR がキレイに比例しているのが分かっていただけると思います。
こちらはデータは開示できませんが、クリックへの寄与率を集計しても、他の要素に比べてダントツの相関を見せます。CTR は、Viewability と相関しているのです。
では、これらの事実を踏まえて何故 Viewable impression がメディアにとって歓迎するべきものか?と言えば、ノイズを排除した上で CTR が高い広告を出す事が可能になるからです。広告主にとってより効果的な広告を配信する事ができますし、メディアにとっても実際にユーザーに支持されている広告が配信される事で、広告効果が上がり、より多くの収益を得ることが可能になります。
(2) Viewable impression の買付けは当然のようにデマンドサイドに広がる。また、Viewability をマーケティング活動に織り込む事がダイレクト顧客においても試行錯誤される
論点の2つ目に行く前に広告主について分類します。サプライサイドでは広告を出稿目的に応じて2つに大別して認識していると思います。即ち、“①商品の認知度の拡大や態度変容を目的として出稿される広告”と、“②コンバージョンや売上の獲得を目的として出稿される広告”です。
前者の広告出稿目的で Viewability がスタンダード化していくのは当然と流れといえます。まさに、見られない広告は意味がないのです。
ですが、後者の広告については、実は枠ごとの Viewability は既に CTR によってある程度織り込まれています。実際、広告枠の評価も CPA/CPI/ROAS/LTV と言った実利をベースにしたものになっているかと思いますので、様々な試行錯誤の結果、「一周回ってやっぱ最終指標で評価しよう」という状態になることが想定されるかと思います。
前述の通りにクリエティブやターゲティングの評価については Viewable impression をベースにした CTR での評価がスタンダードとなっていくのではないでしょうか。
(3) ユーザーモチベーションの解消度
さて、Viewability が可視化されることで、しばらくは広告主や広告代理店から Viewability に注目した広告枠開発や指標の開示を求められるようになるのではないかと思います。場合によって、Viewability による imp 単価の調整等もあるかもしれませんが、その時に注意しておかなければいけないのは、「ユーザーモチベーションの解消度は CVR に影響する。そして、その事実は Viewability では計測されない」という事です。
図2は、Ameba ブログ内の広告枠を典型的に図示しています。ブログの記事のページを掲載しているページには、コンテンツのヘッダーとフッターにそれぞれ広告枠があります。
サイズが違うのですが、ヘッダーの広告枠の Viewability はフッターの広告枠のざっと3倍程度高いです。そういう意味でしばらくは、ヘッダー枠が重用されると思います。ですが、実はヘッダー枠の CVR を100とするとフッターのCVR は概ね2.5倍から3倍くらいあります。ですので、 Viewability ファーストでの枠開発を間違えてしまうと、逆に CVR が低い枠ばかりになってしまい、結果、ダイレクト顧客中心の広告枠では RPM が下がる。という現象を招く事になりかねません。
また、それであれば常にヘッダーの方が CVR の方が悪いかと言われるとそうでもありません。同じヘッダー枠でもブログの目次が表示されているページのヘッダーは、記事ページに対して1.2倍程度の CVR があります(図3参照)。
この事実は、もちろん CVR という指標で把握されるのですが、ここでのキーポイントは「ユーザーモチベーションの解消度」という考え方です。
「ユーザーモチベーションの解消度」は我々のオリジナルの言葉ですが、何も難しいことではありません。単に、「ユーザーがそのページに来た目的を果たした後に出す広告の方が効果が高い」というだけの話です。
ざっとコンテンツページとユーザーのモチベーションを分類すると以下のようになります。
1番目のナビゲーションページでは、「何か見るべきもの」を探すのがモチベーションなので、実は広告であっても見てもらえるし、興味があればクリックされ、実際にCVRも悪く無いです。ブログのTOP = 記事一覧のページのヘッダー枠の CVR が悪く無いのはこうした理由であると我々は考えています。
逆に、ディスティネーションぺージはコンテンツを見終わるまでは広告が飛ばされやすいでしょう。実際フッターの方が効果が良い傾向にあります。同じような形で、コメント後、投稿後のページなども目的としたアクションが終わった後ですので、広告効果が高い傾向があります。
ただし、エンタメ性や話題性の高い広告の場合、これらの範疇に収まらない事もあります。ページに来る前の目的よりも広告が魅力的である場合、モチベーションの解消度にかかわらず高い広告効果を記録することがあります。
というわけで、デマンドサイドから同じ「ヘッダー枠」と指定されている枠でも、実際のユーザーモチベーションが違うので広告効果は変わるのです。CVRで現れるので最終的には織り込まれる事象だと思いますが、これらが理解されるまでフッター枠のみ自社の営業だけで取り扱うという方法もあるかと思います。
我々の管轄のメディアでは、来年の代理店様向けの機能公開より “viewable impression” に統一することを決定しています。
それでは今回はこの辺で終わりとさせていただきます。
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